公職選挙法(142条〜147条)

日本の選挙の仕組み
公職選挙法の趣旨は、公平な「選挙」を維持することにあります。「葉書」等の「ビラ」は、すべて皆さんの「公金」であって、枚数も厳格に定められている。

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しかし、一部の知恵のある者が、この法の「ルール」を無視することによって、無知な国民(法の「ルール」があっても、実際「起訴されない」)を増殖することを目的としているどんでもない輩も存在します。そうすれば、無知な国民をもっと「操りやすく」なるからです。果たして、日本国民のどれだけが、規制内容をしっかりと理解しているのか、取締りを任されている警察等を含め、甚だ疑問である。
「教育」は、各々の国家水準をはかるある種のバロメーターであって、「教育」=「知識を教わること」が豊かな国家は、将来にわたって、「危機管理」等にすぐれることは間違いないし、「安心・安全」な国家を構築することになるだろう。
だからこそ、自らが答えを導き出す「過程」、そして「選別できる能力」を多くの国民がもつことは、非常に大切なことである。
「政治家」になろうと志すものが、「ルール違反=法の形骸」をして、果たして「教育のない国民」を騙せたとでも、思っているのだろうか。

現行の選挙運動の規制
現行の公職選挙法では、選挙の公正、候補者間の平等を確保するため、選挙運動期間中に行われる文書図画の頒布・掲示その他の選挙運動について一定の規制を行っています。インターネット等による情報の伝達も、文書図画の頒布に当たるものとして規制されてきました。  今回の公職選挙法改正により、インターネット等を利用した選挙運動のうち一定のものが解禁されることとなりました。一方で、今までどおりの規制もありますので、注意が必要です。
(注)掲載内容は、平成25年の制度改正時点のものであり、現在は18歳以上(有権者)になれば選挙運動ができます。総務省引用
http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo10_1.html

選挙運動のために使用する文書図画に関し、公職選挙法によって、厳格に規制されています。よって、第142条により選挙運動用文書として頒布することが法定された文書が、「法定文書」と呼ばれるものであって、この「法定文書」以外は公職選挙法違反によって処罰されます。

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(文書図画の頒布)
第142条 衆議院比例代表選出)議員の選挙以外の選挙においては、選挙運動のために使用する文書図画は、次の各号に規定する通常葉書並びに第1号から第3号まで及び第5号から第7号までに規定するビラのほかは、頒布することができない。この場合において、ビラについては、散布することができない。

一 衆議院小選挙区選出)議員の選挙にあつては、候補者一人について、通常葉書 3万5千枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た2種類以内のビラ 7万枚

一の二 参議院比例代表選出)議員の選挙にあつては、公職の候補者たる参議院名簿登載者1人について、通常葉書 15万枚、中央選挙管理会に届け出た2種類以内のビラ 25万枚

二 参議院(選挙区選出)議員の選挙にあつては、候補者一人について、当該選挙区の区域内の衆議院小選挙区選出)議員の選挙区の数が1である場合には、通常葉書 3万5千枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会参議院合同選挙区選挙については、当該選挙に関する事務を管理する参議院合同選挙区選挙管理委員会。以下この号において同じ。)に届け出た二種類以内のビラ 10万枚、当該選挙区の区域内の衆議院小選挙区選出)議員の選挙区の数が1を超える場合には、その1を増すごとに、通常葉書 2千5百枚を3万5千枚に加えた数、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た2種類以内のビラ 1万5千枚を10万枚に加えた数(その数が30万枚を超える場合には、30万枚)

三 都道府県知事の選挙にあつては、候補者一人について、当該都道府県の区域内の衆議院小選挙区選出)議員の選挙区の数が1である場合には、通常葉書 3万5千枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た2種類以内のビラ 10万枚、当該都道府県の区域内の衆議院小選挙区選出)議員の選挙区の数が1を超える場合には、その1を増すごとに、通常葉書 2千5百枚を3万5千枚に加えた数、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た2種類以内のビラ 1万5千枚を10万枚に加えた数(その数が30万枚を超える場合には、30万枚)

四 都道府県の議会の議員の選挙にあつては、候補者1人について、通常葉書 9千枚

五 指定都市の選挙にあつては、長の選挙の場合には、候補者一人について、通常葉書 3万5千枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た2種類以内のビラ 7万枚、議会の議員の選挙の場合には、候補者1人について、通常葉書 4千枚

六 指定都市以外の市の選挙にあつては、長の選挙の場合には、候補者一人について、通常葉書 8千枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た2種類以内のビラ 1万6千枚、議会の議員の選挙の場合には、候補者1人について、通常葉書 2千枚

七 町村の選挙にあつては、長の選挙の場合には、候補者一人について、通常葉書 二千五百枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 五千枚、議会の議員の選挙の場合には、候補者一人について、通常葉書 八百枚

2 前項の規定にかかわらず、衆議院小選挙区選出)議員の選挙においては、候補者届出政党は、その届け出た候補者に係る選挙区を包括する都道府県ごとに、2万枚に当該都道府県における当該候補者届出政党の届出候補者の数を乗じて得た数以内の通常葉書及び4万枚に当該都道府県における当該候補者届出政党の届出候補者の数を乗じて得た数以内のビラを、選挙運動のために頒布(散布を除く。)することができる。ただし、ビラについては、その届け出た候補者に係る選挙区ごとに4万枚以内で頒布するほかは、頒布することができない。

3 衆議院比例代表選出)議員の選挙においては、衆議院名簿届出政党等は、その届け出た衆議院名簿に係る選挙区ごとに、中央選挙管理会に届け出た二種類以内のビラを、選挙運動のために頒布(散布を除く。)することができる。

4 衆議院比例代表選出)議員の選挙においては、選挙運動のために使用する文書図画は、前項の規定により衆議院名簿届出政党等が頒布することができるビラのほかは、頒布することができない。

5 第1項の通常葉書は無料とし、第2項の通常葉書は有料とし、政令で定めるところにより、日本郵便株式会社において選挙用である旨の表示をしたものでなければならない。

6 第1項第1号から第3号まで及び第5号から第7号まで、第2項並びに第3項のビラは、新聞折込みその他政令で定める方法によらなければ、頒布することができない。

7 第1項第1号から第3号まで及び第5号から第7号まで並びに第2項のビラは、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会参議院比例代表選出議員の選挙については中央選挙管理会参議院合同選挙区選挙については当該選挙に関する事務を管理する参議院合同選挙区選挙管理委員会。以下この項において同じ。)の定めるところにより、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会の交付する証紙を貼らなければ頒布することができない。この場合において、第二項のビラについて当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会の交付する証紙は、当該選挙の選挙区ごとに区分しなければならない。

8 第1項第1号から第3号まで及び第5号から第7号までのビラは長さ29・7センチメートル、幅21センチメートルを、第2項のビラは長さ42センチメートル、幅29・7センチメートルを、超えてはならない。

9 第1項第1号から第3号まで及び第5号から第7号まで、第2項並びに第3項のビラには、その表面に頒布責任者及び印刷者の氏名(法人にあつては名称)及び住所を記載しなければならない。この場合において、第1項第1号の2のビラにあつては当該参議院名簿登載者に係る参議院名簿届出政党等の名称及び同号のビラである旨を表示する記号を、第二項のビラにあつては当該候補者届出政党の名称を、第3項のビラにあつては当該衆議院名簿届出政党等の名称及び同項のビラである旨を表示する記号を、併せて記載しなければならない。

10 衆議院小選挙区選出)議員又は参議院議員の選挙における公職の候補者は、政令で定めるところにより、政令で定める額の範囲内で、第1項第1号から第2号までの通常葉書及びビラを無料で作成することができる。この場合においては、第141条第7項ただし書の規定を準用する。

11 都道府県知事の選挙については都道府県は、市長の選挙については市は、それぞれ、前項の規定(参議院比例代表選出議員の選挙に係る部分を除く。)に準じて、条例で定めるところにより、公職の候補者の第1項第3号、第5号及び第6号のビラの作成について、無料とすることができる。

12 選挙運動のために使用する回覧板その他の文書図画又は看板(プラカードを含む。以下同じ。)の類を多数の者に回覧させることは、第1項から第4項までの頒布とみなす。ただし、第143条第1項第2号に規定するものを同号に規定する自動車又は船舶に取り付けたままで回覧させること、及び公職の候補者(衆議院比例代表選出議員の選挙における候補者で当該選挙と同時に行われる衆議院小選挙区選出議員の選挙における候補者である者以外のものを除く。)が同項第3号に規定するものを着用したままで回覧することは、この限りでない。

13 衆議院議員の総選挙については、衆議院の解散に関し、公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)の氏名又はこれらの者の氏名が類推されるような事項を表示して、郵便等又は電報により、選挙人にあいさつする行為は、第1項の禁止行為に該当するものとみなす。

判例解釈
第142条は、文書図画による選挙運動のうち、「頒布」についての制限を規定するものであるが、同条は、選挙運動用文書に関し、頒布し得る文書の形式・枚数などを法定するとともに、その頒布方法をも法定したものと解される(最決昭36・2・2)

民事訴訟法編「文書提出命令」等(219条〜226条)

(書証の申出)
第219条 書証の申出は,文書を提出し,又は文書の所持者にその提出を命ずることを申し立ててしなければならない。

(文書提出義務)
第220条 次に掲げる場合には,文書の所持者は,その提出を拒むことができない。

一 当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき。

二 挙証者が文書の所持者に対しその引渡し又は閲覧を求めることができるとき。

三 文書が挙証者の利益のために作成され,又は挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき。

四 前三号に掲げる場合のほか,文書が次に掲げるもののいずれにも該当しないとき。

イ 文書の所持者又は文書の所持者と第196条各号に掲げる関係を有する者についての同条に規定する事項が記載されている文書

ロ 公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し,又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの

ハ 第197条第1項第2号に規定する事実又は同項第3号に規定する事項で,黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書

ニ 専ら文書の所持者の利用に供するための文書(国又は地方公共団体が所持する文書にあっては,公務員が組織的に用いるものを除く。)

ホ 刑事事件に係る訴訟に関する書類若しくは少年の保護事件の記録又はこれらの事件において押収されている文書

(文書提出命令の申立て)
第221条 文書提出命令の申立ては,次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。

一 文書の表示

二 文書の趣旨

三 文書の所持者

四 証明すべき事実

五 文書の提出義務の原因

2 前条第4号に掲げる場合であることを文書の提出義務の原因とする文書提出命令の申立ては,書証の申出を文書提出命令の申立てによってする必要がある場合でなければ,することができない。

(文書の特定のための手続)
第222条 文書提出命令の申立てをする場合において,前条第1項第1号又は第2号に掲げる事項を明らかにすることが著しく困難であるときは,その申立ての時においては,これらの事項に代えて,文書の所持者がその申立てに係る文書を識別することができる事項を明らかにすれば足りる。この場合においては,裁判所に対し,文書の所持者に当該文書についての同項第1号又は第2号に掲げる事項を明らかにすることを求めるよう申し出なければならない。

2 前項の規定による申出があったときは,裁判所は,文書提出命令の申立てに理由がないことが明らかな場合を除き,文書の所持者に対し,同項後段の事項を明らかにすることを求めることができる。

(文書提出命令等)
第223条 裁判所は,文書提出命令の申立てを理由があると認めるときは,決定で,文書の所持者に対し,その提出を命ずる。この場合において,文書に取り調べる必要がないと認める部分又は提出の義務があると認めることができない部分があるときは,その部分を除いて,提出を命ずることができる。

2 裁判所は,第三者に対して文書の提出を命じようとする場合には,その第三者を審尋しなければならない。

3 裁判所は,公務員の職務上の秘密に関する文書について第220条第4号に掲げる場合であることを文書の提出義務の原因とする文書提出命令の申立てがあった場合には,その申立てに理由がないことが明らかなときを除き,当該文書が同号ロに掲げる文書に該当するかどうかについて,当該監督官庁衆議院又は参議院の議員の職務上の秘密に関する文書についてはその院,内閣総理大臣その他の国務大臣の職務上の秘密に関する文書については内閣。以下この条において同じ。)の意見を聴かなければならない。この場合において,当該監督官庁は,当該文書が同号ロに掲げる文書に該当する旨の意見を述べるときは,その理由を示さなければならない。

4 前項の場合において,当該監督官庁が当該文書の提出により次に掲げるおそれがあることを理由として当該文書が第220条第4号ロに掲げる文書に該当する旨の意見を述べたときは,裁判所は,その意見について相当の理由があると認めるに足りない場合に限り,文書の所持者に対し,その提出を命ずることができる。

一 国の安全が害されるおそれ,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれ

二 犯罪の予防,鎮圧又は捜査,公訴の維持,刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ

5 第3項前段の場合において,当該監督官庁は,当該文書の所持者以外の第三者の技術又は職業の秘密に関する事項に係る記載がされている文書について意見を述べようとするときは,第220条第4号ロに掲げる文書に該当する旨の意見を述べようとするときを除き,あらかじめ,当該第三者の意見を聴くものとする。

6 裁判所は,文書提出命令の申立てに係る文書が第220条第4号イからニまでに掲げる文書のいずれかに該当するかどうかの判断をするため必要があると認めるときは,文書の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては,何人も,その提示された文書の開示を求めることができない。

7 文書提出命令の申立てについての決定に対しては,即時抗告をすることができる。

(当事者が文書提出命令に従わない場合等の効果)
第224条 当事者が文書提出命令に従わないときは,裁判所は,当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができる。

2 当事者が相手方の使用を妨げる目的で提出の義務がある文書を滅失させ,その他これを使用することができないようにしたときも,前項と同様とする。

3 前二項に規定する場合において,相手方が,当該文書の記載に関して具体的な主張をすること及び当該文書により証明すべき事実を他の証拠により証明することが著しく困難であるときは,裁判所は,その事実に関する相手方の主張を真実と認めることができる。

(第三者が文書提出命令に従わない場合の過料)
第225条 第三者が文書提出命令に従わないときは,裁判所は,決定で,二十万円以下の過料に処する。

2 前項の決定に対しては,即時抗告をすることができる。

(文書送付の嘱託)
第226条 書証の申出は,第219条の規定にかかわらず,文書の所持者にその文書の送付を嘱託することを申し立ててすることができる。ただし,当事者が法令により文書の正本又は謄本の交付を求めることができる場合は,この限りでない。

(文書の留置)
第227条 裁判所は,必要があると認めるときは,提出又は送付に係る文書を留め置くことができる。

平成25年8月30日判決言渡 平成25年(行コ)第1号 営業許可処分取消等請求控訴事件

平成25年8月30日判決言渡 平成25年(行コ)第1号 営業許可処分取消等請求控訴事件

主 文
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人Aの本件訴えを却下する。
3 被控訴人B,同C,同D及び同Eの請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は,第1,2審を通じ,被控訴人らの負担とする。

第1 控訴の趣旨
1 主文1,2項と同旨
2 被控訴人B,同C,同D及び同Eの訴えを却下する。
3 予備的に,被控訴人らの請求をいずれも棄却する。

第2 事案の概要
1 本件は,大阪府交野市α所在のぱちんこ屋「F店」(以下「本件店舗」という。)に関し,同店の経営主体であるG株式会社が大阪府公安委員会から風俗営業法に基づく営業許可を受けたこと(以下「本件営業許可処分」という。)について,本件店舗の近隣に居住し,又は本件店舗の周辺に存するH小学校に通学中の児童の保護者である被控訴人らが,本件店舗は,その所在地が大阪府風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例2条1項2号の距離制限規定に違反しているから,本件営業許可処分は無効である等と主張して,控訴人に対しその取消を請求する事案である。

原審は,被控訴人らの請求を認容した。
控訴人は,この判断を不服として控訴した。
なお,原審では,被控訴人らの他にIら3名が相原告として本件営業許可処分の取消請求をしていたが,原判決で請求を棄却されて確定した。また,上記Iら3名及び被控訴人らは,原審において,本件営業許可処分の取消請求のほか,本件店舗の建築確認申請に関する建築計画変更確認処分の無効確認請求も併合提起していたが,原審で訴えを却下され,確定した。

2 法令等の定め
本件に関係する法令等の定めについては,次のとおり付加,訂正するほか,原判決「事実及び理由」中,第2の1のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原判決5頁8行目「幼児,児童や生徒等」を「幼児,児童,生徒等」と改める。
(2) 原判決5頁10行目「診療所の敷地」を「診療所(患者を入院させるための施設を有するものに限る。)の敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む。)」と改める。
(3) 原判決5頁15〜16行目「教育施設等」を「距離制限対象施設」と改める。
(4) 原判決5頁16行目末尾に改行して以下のとおり加える。
「医療法1条の5第1項に規定する「病院」とは,医師又は歯科医師が,公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であって,20人以上の患者を入院させるための施設を有するものをいい,同第2項に規定する「診療所」とは,医師又は歯科医師が,公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であって,患者を入院させるための施設を有しないもの又は19人以下の患者を入院させるための施設を有するものをいうとされている。」

3 前提事実(争いのない事実及び後掲各証拠により認められる事実)
(1) 本件店舗と関連施設の状況
本件店舗は,大阪府交野市α×番地4所在の6階建マンション「J」(以下「本件建物」という。)の1階の一部に存在する。
本件建物の1階の状況は別紙1の営業所平面図記載のとおりであって,本件建物の中央部分に本件店舗が存する。本件建物東南側,同平面図?の位置に「福祉事務所」と記載された部分には,本件店舗で発行する特殊景品を買い取る景品交換所(以下「本件景品交換所」という。)が存する。本件建物東南角,同平面図?の位置に「福祉用防犯カメラ」と記載された部分には,防犯カメラ(以下「本件防犯カメラ」という。)が設置されている(甲47)。
本件店舗は,従業員用更衣室(以下「本件更衣室」という。)を,本件建物の東側に約30メートルの距離に存する「K」(別紙4の本件建物周辺拡大図?の位置)の一室に設けている。
本件店舗は,来店者用の駐車場として,本件建物の南側に隣接する幅員4メートルの府道β線(以下「本件道路」という。)をはさんだ東南側(同拡大図?に「L駐車場」と記載された場所)に,専用駐車場(以下「本件駐車場」という。)を設置している。
(2) 本件建物周辺の学校と(1)の施設等との位置関係
交野市立H小学校(以下「H小学校」という。)は,本件建物の東方,別紙2の付近見取図?の位置に「市立H小学校」と記載された部分に存する。
H小学校の敷地と本件建物の位置関係は別紙3の現況実測平面図のとおりであり,H小学校の敷地西北角(ポイント40)から100メートルの点を結んで円弧を描くと,別紙3の詳細図記載のとおり,本件景品交換所の一部はH小学校から100メートル以内の範囲に入るが,本件店舗本体は同範囲に入らない。
同様に,H小学校の敷地西角(ポイント46)から100メートルの点を結んで円弧を描くと,本件景品交換所はほぼその全体が100メートルの範囲内となるが,本件店舗本体は同範囲に入らない。本件駐車場及び本件更衣室はいずれもH小学校敷地角から100メートルの範囲内にある。
(3) 被控訴人らの自宅と本件店舗の位置関係(甲55)
被控訴人B,同C,同D及び同Eの自宅は,本件店舗の近隣に存し,本件建物を含め,いずれも都市計画法上の近隣商業地域に属する。その位置は,別紙4の本件建物周辺拡大図記載のとおりであり,同拡大図記載アの建物が被控訴人B,イが被控訴人C,ウが被控訴人D,エが被控訴人Eの自宅である。上記被控訴人らの自宅から本件建物の敷地までの距離は,被控訴人Bが19.5メートル,被控訴人Cが12メートル,被控訴人Dが4.8メートル,被控訴人Eが1.54メートルである。
被控訴人Aの自宅と本件店舗は数百メートル離れている。
(4) 被控訴人らの子女の通学状況(甲55,56,58,60,61,63,86,弁論の全趣旨)
被控訴人らの自宅は,いずれもH小学校の学区内にある。
ア 被控訴人Bには,長女(平成▲年▲月▲日生)と二女(平成▲年▲月▲日)があり,長女はH小学校に通っている。
イ 被控訴人Cには,長女(平成▲年▲月▲日生)と二女(平成▲年▲月▲日生)があり,長女はH小学校に通っている。
ウ 被控訴人Dには,長女(平成▲年▲月▲日生)と長男(平成▲年▲月▲日生)があり,長男はH小学校に通っている。
エ 被控訴人Eには,長女(平成▲年▲月▲日生)と長男(平成▲年▲月▲日生)があり,長女及び長男はH小学校に通っている。
オ 被控訴人Aには,長女(平成▲年▲月▲日生),長男(平成▲年▲月▲日生)及び二男(平成▲年▲月▲日生)があり,二男はH小学校に通っている。
(5) 本件営業許可処分
G株式会社は,平成21年8月10日,大阪府公安委員会に対し,風営法5条1項に基づいて,本件建物の1階の一部でぱちんこ屋の営業を行うことについての許可申請を行った(甲3)。
大阪府公安委員会は,同年10月2日,G株式会社に対し,本件建物1階の一部分で風営法2条1項7号の営業を営むことを許可した(甲4,本件営業許可処分)。
4 争点
(1) 被控訴人らに原告適格が認められるか(本案前の争点)
(2) 被控訴人らの主張する違法事由は,行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)10条1項による主張制限を受けるか(本案の争点その1)
(3) 本件営業許可処分について取消事由はあるか(本案の争点その2)
5 争点に関する当事者の主張
(1) 争点(1)(被控訴人らに原告適格が認められるか)について

ア 被控訴人ら
(ア) 被控訴人らの原告適格は,行訴法9条2項に規定されているとおり,風営法等の文言だけにとらわれるのではなく,風営法並びにその関係法令及び条例(以下「風営法及び関連法令」という。)の趣旨及び目的や,本件営業許可処分がされることにより制約される権利・利益の内容及び性質を実質的に検討して判断されるべきであるところ,以下のとおり,本件において被控訴人らには,本件店舗の周辺に居住する近隣住民としての原告適格あるいはH小学校に子らを通学させ,または通学させる予定である保護者としての原告適格がある。

(イ) 近隣住民としての原告適格について
風営法は,「善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し,及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため,風俗営業及び性風俗関連特殊営業等について,営業時間,営業区域等を制限し,及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに,風俗営業の健全化に資するため,その業務の適正化を促進する等の措置を講ずること」を目的とし(同法1条),ぱちんこ屋の営業時間,照度,騒音,振動及び広告宣伝等について規制しているほか(同法13条ないし16条),条例による善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害する行為を防止するために必要な制限をすることができるとする等(同法21条),営業所周辺における善良で清浄な風俗環境を確保するための規定を具体的に規定しているし,同法4条2項,風営法施行令6条1号イ,大阪府風営法施行条例2条1号によって,住居集合地域における営業所の設置自体を禁止している。
これらの規定にかんがみれば,風営法及びその関係法令は,騒音・振動等を規制することにより,当該営業所の周辺に居住する近隣住民の静穏な生活環境を享受する権利を個別具体的な利益として保護しているといえる。
なお,風営法施行令6条1号ロが距離制限対象施設の敷地の周囲おおむね100メートルの区域で営業所の設置を禁止しているのに対し,同号イは住居集合地域と営業所との距離を明示していないが,営業所が設置されることによって近隣住民が被る害悪と距離制限対象施設の被る害悪は異なるところはないから,同号イの地域も,同号ロとの均衡から,営業所からおおむね100メートルの範囲に居住する近隣住民の権利・利益を保護しているものと解すべきである(営業所の設置により被る近隣住民の被害の性質・程度は都市計画の区割りとは無関係であるし,現状として,都市計画法の区割りと実態とは必ずしも一致していないから,被控訴人らのうち,被控訴人B,同C,同D及び同Eの4名が近隣商業地域に居住していることは,被控訴人らの原告適格の判断に影響しない。)。
被控訴人らの静穏な生活環境を享受する権利は,生活を営む上での最も基本的な権利であり,人格権(憲法13条)の一内容で重要であるところ,本件店舗でぱちんこ屋の営業をされると,本件店舗やその利用客が発する騒音が深夜に及ぶこと等によって,被控訴人らの権利が侵害されることになる。
被控訴人Aを除くその余の被控訴人らは,本件店舗から100メートルの範囲に居住しているため,原告適格が認められる。

(ウ) 保護者としての原告適格について
風営法4条2項2号,風営法施行令6条1号ロ,同条2号,大阪府風営法施行条例2条1項2号は,距離制限対象施設の敷地の周囲からおおむね100メートルの範囲内を営業制限地域とする旨定め,同範囲内における営業所の設置を禁止している。また,これら根拠法令は,風俗営業等について,営業時間,営業区域等を限定し,年少者を立ち入らせないようにしている。これら各規定は,教育施設の利用者たる
児童(その保護者)が健全で静穏な風俗環境下で教育を受ける(受けさせる)権利を個別具体的に保護しているというべきである。
被控訴人らは,いずれもH小学校に通う児童の保護者であることから,健全で静穏な風俗環境下で子女に教育を受けさせる権利を有しているといえ,原告適格を有する。

(エ) 関連する最高裁判例について
最高裁平成6年9月27日第三小法廷判決(裁判集民事173号111頁,以下「平成6年最判」という。)は,距離制限対象施設である医療機関の設置者が,風営法4条2項2号,風営法施行令6条2号及び神奈川県の風営法施行条例3条1項3号所定の距離制限違反を主張して風俗営業許可の取消しを主張した事案であるが,最高裁は,上記各根拠法令は,同号所定の診療所等の施設につき善良で静穏な環境の下で円滑に業務を運営するという利益をも保護していると判示した。したがって,風営法4条2項2号,風営法施行令6条2号の距離制限規定は,医療機関のみならず,同じく距離制限対象施設とされている文教施設において善良で静穏な環境の下で円滑に業務を運営するという利益をも保護していると解すべきである。そして,平成6年最判を演繹すれば,風営法は,文教施設利用者である児童生徒の保護者の利益も個別的に保護していると解される。
最高裁平成10年12月17日第一小法廷判決(民集52巻9号1821頁,以下「平成10年最判」という。)は,ぱちんこ屋の営業許可取消訴訟であるが,第一種低層住居専用地域に住む原告らの原告適格を否定した。
しかし,平成10年最判の原告らは,近隣住民の静穏な生活環境を享受する権利のみを主張していた点で本件とは異なるし,平成16年に行訴法が改正されたことに伴い,平成10年最判判例変更される可能性が高い。したがって,平成10年最判を本件に適用すべきではない。
最高裁平成21年10月15日第一小法廷判決(民集63巻8号1711頁,以下「平成21年最判」という。)は,自転車競技法に基づき設置された場外車券発売施設の設置許可に関し,周辺住民について,その生活環境上の利益は個別的利益として保護されないとして原告適格を認めず,自転車競技法施行規則上のいわゆる位置基準を根拠として取消訴訟を提起する原告適格を有するのは,場外車券販売施設の設置,運営に伴い著しい業務上の支障が生ずるおそれがあると位置的に認められる区域に文教施設または医療施設を開設する者に限られるとした。
しかし,平成21年最判は行訴法9条2項の趣旨に反する特異な判決である上,自転車競技法及びその関連法令は,風営法及びその関連法令に比べて規定内容が不明確であり,騒音・振動等について個別的規制のある風営法とは異なるから,平成21年最判の判断手法を本件に持ち込むのは相当ではない。
d 平成10年最判と平成21年最判があるにもかかわらず,第一種低層住居専用地域内の住民や距離制限対象施設である文教施設利用者の保護者に原告適格を認めた下級審判決が相次いでいることは,平成10年最判と平成21年最判が変更されるべきであることを示している。
イ 控訴人
(ア) 近隣住民としての原告適格について
平成10年最判は,風営法4条2項2号について「良好な風俗環境の保全という公益的な見地から風俗営業の制限地域の指定を行うことを予定しているものと解されるのであって,同号自体が当該営業制限地域の居住者個々人の個別的利益をも保護することを目的としているものとは解し難い。」とした。このように,風営法4条2項2号は,近隣住民の個別的利益を保護する趣旨を含まず,近隣住民は処分取消訴訟についての原告適格を有しない。被控訴人らは,騒音規制等に関する規定が存することを処分取消に関する原告適格を基礎づける事情として主張するが,騒音規制違反等があれば,別途是正を図れば足りることであり,営業許可取消訴訟を提起させるまでの必要性はないから,これらを個別的利益保護に関する規定ということはできず,近隣住民に原告適格を認める理由とならない。
しかも,被控訴人らのうち,本件店舗の近隣に居住している被控訴人A以外の4名の自宅は,いずれも営業制限地域に該当しない近隣商業地域に存し,この意味でも同人らに近隣住民としての原告適格は認められない。
(イ) 保護者としての原告適格について
平成10年最判は,風営法施行令6条1号ロ及び2号とこれを受けた東京都の風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例による特定の施設の周囲おおむね100メートル以内の区域についての営業制限規定につき,「当該特定の施設の設置者の有する個別的利益を特に保護しようとするものと解され」「同号所定の施設につき善良で静穏な環境の下で円滑に業務をするという利益をも保護していると解すべきである。」とした。この規定による個別的利益保護の対象として原告適格を認められるのは,距離制限対象施設の設置者に限られる。善良で静穏な環境が害されることにより処分の取消まで求めるか否かの判断は施設設置者に委ねれば足り,不特定多数人であって間接的な利益を有するにすぎない距離制限対象施設の利用者にまで原告適格を認める必要はない。
大阪府風営法施行条例は,距離制限対象施設を学校,各種学校及び保育所並びに病院及び診療所(いずれも入院施設を有するもの)と定めており,これらの施設の間に保護対象として何らの差異を設けていない。
そうすると,病院または診療所に短期間通院する患者や,通学期間の短い生徒等も距離制限対象施設の利用者ということになるから,通学期間が長いこと等を根拠に,施設利用者に対して原告適格を認めるという判断方法は,風営法の保護する利益に関する解釈を誤っている。

(2) 争点(2)(被控訴人らの主張する違法事由は,行訴法10条1項による主張制限を受けるか)について

ア 控訴人
被控訴人らが騒音及び振動による損害を受けるおそれがあることを理由に原告適格を認められたとしても,被控訴人らは,風営法4条2項1号及び風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則(以下「風営法施行規則」という。)8条が営業許可の基準として規定する営業所の騒音及び振動に関する具体的な違法についての主張を一切行っておらず,本件店舗またはその関連施設がH小学校の敷地から100メートル以内に存することを違法事由として主張するにすぎない。かかる主張は,自己の法律上の利益に関係のない違法事由に関する主張として行訴法10条1項による制限を受ける。

民事訴訟法編(選定当事者、30条)

選定当事者
第30条 共同の利益を有する多数の者で前条の規定に該当しないものは,その中から,全員のために原告又は被告となるべき一人又は数人を選定することができる。

2 訴訟の係属の後,前項の規定により原告又は被告となるべき者を選定したときは,他の当事者は,当然に訴訟から脱退する。

3 係属中の訴訟の原告又は被告と共同の利益を有する者で当事者でないものは,その原告又は被告を自己のためにも原告又は被告となるべき者として選定することができる。

4 第1項又は前項の規定により原告又は被告となるべき者を選定した者(以下「選定者」という。)は,その選定を取り消し,又は選定された当事者(以下「選定当事者」という。)を変更することができる。

5 選定当事者のうち死亡その他の事由によりその資格を喪失した者があるときは,他の選定当事者において全員のために訴訟行為をすることができる。

民事訴訟法編(弁論準備 168条〜174条)

民訴(弁論準備)条文

(弁論準備手続の開始)
第168条 裁判所は,争点及び証拠の整理を行うため必要があると認めるときは,当事者の意見を聴いて,事件を弁論準備手続に付することができる。

(弁論準備手続の期日)
第169条 弁論準備手続は,当事者双方が立ち会うことができる期日において行う。

2 裁判所は,相当と認める者の傍聴を許すことができる。ただし,当事者が申し出た者については,手続を行うのに支障を生ずるおそれがあると認める場合を除き,その傍聴を許さなければならない。

(弁論準備手続における訴訟行為等)
第170条 裁判所は,当事者に準備書面を提出させることができる。

2 裁判所は,弁論準備手続の期日において,証拠の申出に関する裁判その他の口頭弁論の期日外においてすることができる裁判及び文書(第231条に規定する物件を含む。)の証拠調べをすることができる。

3 裁判所は,当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは,当事者の意見を聴いて,最高裁判所規則で定めるところにより,裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって,弁論準備手続の期日における手続を行うことができる。ただし,当事者の一方がその期日に出頭した場合に限る。

4 前項の期日に出頭しないで同項の手続に関与した当事者は,その期日に出頭したものとみなす。

5 第148条から第151条まで,第152条第1項,第153条から第159条まで,第162条,第165条及び第166条の規定は,弁論準備手続について準用する。

(受命裁判官による弁論準備手続)
第171条 裁判所は,受命裁判官に弁論準備手続を行わせることができる。

2 弁論準備手続を受命裁判官が行う場合には,前2条の規定による裁判所及び裁判長の職務(前条第2項に規定する裁判を除く。)は,その裁判官が行う。ただし,同条第5項において準用する第150条の規定による異議についての裁判及び同項において準用する第157条の二の規定による却下についての裁判は,受訴裁判所がする。

3 弁論準備手続を行う受命裁判官は,第186条の規定による調査の嘱託,鑑定の嘱託,文書(第231条に規定する物件を含む。)を提出してする書証の申出及び文書(第229条第2項及び第231条に規定する物件を含む。)の送付の嘱託についての裁判をすることができる。

(弁論準備手続に付する裁判の取消し)
第172条 裁判所は,相当と認めるときは,申立てにより又は職権で,弁論準備手続に付する裁判を取り消すことができる。ただし,当事者双方の申立てがあるときは,これを取り消さなければならない。

(弁論準備手続の結果の陳述)
第173条 当事者は,口頭弁論において,弁論準備手続の結果を陳述しなければならない。

(弁論準備手続終結後の攻撃防御方法の提出)
第174条 第167条の規定は,弁論準備手続の終結後に攻撃又は防御の方法を提出した当事者について準用する。

民事訴訟法編(「送達」98条〜113条)

民事訴訟法「送達」関係

(職権送達の原則等)
第98条 送達は,特別の定めがある場合を除き,職権でする。

2 送達に関する事務は,裁判所書記官が取り扱う。

第99条(送達実施機関)
送達は,特別の定めがある場合を除き,郵便又は執行官によってする。

2 郵便による送達にあっては,郵便の業務に従事する者を送達をする者とする。

裁判所書記官による送達)
第100条 裁判所書記官は,その所属する裁判所の事件について出頭した者に対しては,自ら送達をすることができる。

(交付送達の原則)
第101条 送達は,特別の定めがある場合を除き,送達を受けるべき者に送達すべき書類を交付してする。

(訴訟無能力者等に対する送達)
第102条 訴訟無能力者に対する送達は,その法定代理人にする。

2 数人が共同して代理権を行うべき場合には,送達は,その一人にすれば足りる。

3 刑事施設に収容されている者に対する送達は,刑事施設の長にする。

(送達場所)
第103条 送達は,送達を受けるべき者の住所,居所,営業所又は事務所(以下この節において「住所等」という。)においてする。ただし,法定代理人に対する送達は,本人の営業所又は事務所においてもすることができる。

2 前項に定める場所が知れないとき,又はその場所において送達をするのに支障があるときは,送達は,送達を受けるべき者が雇用,委任その他の法律上の行為に基づき就業する他人の住所等(以下「就業場所」という。)においてすることができる。送達を受けるべき者(次条第1項に規定する者を除く。)が就業場所において送達を受ける旨の申述をしたときも,同様とする。

(送達場所等の届出)
第104条 当事者,法定代理人又は訴訟代理人は,送達を受けるべき場所(日本国内に限る。)を受訴裁判所に届け出なければならない。この場合においては,送達受取人をも届け出ることができる。

2 前項前段の規定による届出があった場合には,送達は,前条の規定にかかわらず,その届出に係る場所においてする。

3 第1項前段の規定による届出をしない者で次の各号に掲げる送達を受けたものに対するその後の送達は,前条の規定にかかわらず,それぞれ当該各号に定める場所においてする。

一 前条の規定による送達

  その送達をした場所

二 次条後段の規定による送達のうち郵便の業務に従事する者が日本
  郵便株式会社の営業所(郵便の業務を行うものに限る。第106
  条第一項後段において同じ。)においてするもの及び同項後段の
  規定による送達

  その送達において送達をすべき場所とされていた場所

三 第107条第1項第1号の規定による送達

  その送達においてあて先とした場所

(出会送達)
第105条 前二条の規定にかかわらず,送達を受けるべき者で日本国内に住所等を有することが明らかでないもの(前条第1項前段の規定による届出をした者を除く。)に対する送達は,その者に出会った場所においてすることができる。日本国内に住所等を有することが明らかな者又は同項前段の規定による届出をした者が送達を受けることを拒まないときも,同様とする。

(補充送達及び差置送達)
第106条 就業場所以外の送達をすべき場所において送達を受けるべき者に出会わないときは,使用人その他の従業者又は同居者であって,書類の受領について相当のわきまえのあるものに書類を交付することができる。郵便の業務に従事する者が日本郵便株式会社の営業所において書類を交付すべきときも,同様とする。

2 就業場所(第104条第1項前段の規定による届出に係る場所が就業場所である場合を含む。)において送達を受けるべき者に出会わない場合において,第103条第2項の他人又はその法定代理人若しくは使用人その他の従業者であって,書類の受領について相当のわきまえのあるものが書類の交付を受けることを拒まないときは,これらの者に書類を交付することができる。

3 送達を受けるべき者又は第1項前段の規定により書類の交付を受けるべき者が正当な理由なくこれを受けることを拒んだときは,送達をすべき場所に書類を差し置くことができる。

(書留郵便等に付する送達)
第107条 前条の規定により送達をすることができない場合には,裁判所書記官は,次の各号に掲げる区分に応じ,それぞれ当該各号に定める場所にあてて,書類を書留郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成14年法律第99号)第2条第6項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第9項に規定する特定信書便事業者の提供する同条第2項に規定する信書便の役務のうち書留郵便に準ずるものとして最高裁判所規則で定めるもの(次項及び第3項において「書留郵便等」という。)に付して発送することができる。

一 第103条の規定による送達をすべき場合

  同条第1項に定める場所

二 第104条第2項の規定による送達をすべき場合

  同項の場所

三 第104条第3項の規定による送達をすべき場合

  同項の場所(その場所が就業場所である場合にあっては,
  訴訟記録に表れたその者の住所等)

2 前項第2号又は第3号の規定により書類を書留郵便等に付して発送した場合には,その後に送達すべき書類は,同項第2号又は第3号に定める場所にあてて,書留郵便等に付して発送することができる。

3 前2項の規定により書類を書留郵便等に付して発送した場合には,その発送の時に,送達があったものとみなす。

(外国における送達)
第108条 外国においてすべき送達は,裁判長がその国の管轄官庁又はその国に駐在する日本の大使,公使若しくは領事に嘱託してする。

(送達報告書)
第109条 送達をした者は,書面を作成し,送達に関する事項を記載して,これを裁判所に提出しなければならない。

(公示送達の要件)
第110条 次に掲げる場合には,裁判所書記官は,申立てにより,公示送達をすることができる。

一 当事者の住所,居所その他送達をすべき場所が知れない場合

二 第107条第1項の規定により送達をすることができない場合

三 外国においてすべき送達について,第108条の規定によることができず,又はこれによっても送達をすることができないと認めるべき場合

四 第108条の規定により外国の管轄官庁に嘱託を発した後6月を経過してもその送達を証する書面の送付がない場合

2 前項の場合において,裁判所は,訴訟の遅滞を避けるため必要があると認めるときは,申立てがないときであっても,裁判所書記官に公示送達をすべきことを命ずることができる。

3 同一の当事者に対する2回目以降の公示送達は,職権でする。ただし,第1項第4号に掲げる場合は,この限りでない。

(公示送達の方法)
第111条 公示送達は,裁判所書記官が送達すべき書類を保管し,いつでも送達を受けるべき者に交付すべき旨を裁判所の掲示場に掲示してする。

(公示送達の効力発生の時期)
第112条 公示送達は,前条の規定による掲示を始めた日から2週間を経過することによって,その効力を生ずる。ただし,第110条第3項の公示送達は,掲示を始めた日の翌日にその効力を生ずる。

2 外国においてすべき送達についてした公示送達にあっては,前項の期間は、6週間とする。

3 前2項の期間は,短縮することができない。

(公示送達による意思表示の到達)
第113条 訴訟の当事者が相手方の所在を知ることができない場合において,相手方に対する公示送達がされた書類に,その相手方に対しその訴訟の目的である請求又は防御の方法に関する意思表示をする旨の記載があるときは,その意思表示は、第111条の規定による掲示を始めた日から2週間を経過した時に,相手方に到達したものとみなす。この場合においては,民法第98条第3項ただし書の規定を準用する。