最判昭43・2・22 民集22・2・270

上告代理人青柳孝夫の上告理由第一点について。
境界確定の訴は、隣接する土地の境界が事実上不明なため争いがある場合に、
裁判によつて新たにその境界を確定することを求める訴であつて、
土地所有権の範囲の確認を目的とするものではない。
したがつて、上告人主張の取得時効の抗弁の当否は、
境界確定には無関係であるといわなければならない。

けだし、かりに上告人が本件a番地のbの土地の一部を
時効によつて取得したとしても、
これによりa番地のcとa番地のbの各土地の境界が
移動するわけのものではないからである。
上告人が、時効取得に基づき、右の境界を越えてa番地のbの土地の一部につき
所有権を主張しようとするならば、
別に当該の土地につき所有権の確認を求めるべきである。

それゆえ、取得時効の成否の問題は所有権の帰属に関する問題で、
相隣接する土地の境界の確定とはかかわりのない問題であるとした原審の判断は、
正当である。
所論引用の判例は、当裁判所の採らないところである。原判決に所論の違法は
なく、右と異なる見解に立つ論旨は採用することができない。

 同第二点について。
本件a番地のcの土地とa番地のbの土地の境界がAB線である旨の
原審の認定判断は正当であつて、その過程に所論の違法は認められない。
論旨は、原審の適法にした証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものであつて、
採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。

最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官    大   隅   健 一 郎
裁判官       入   江   俊   郎
裁判官       長   部   謹   吾
裁判官       松   田   二   郎
裁判官       岩   田       誠